水にはミネラルウォーターや炭酸水、アルカリイオン水などさまざまな種類があります。ここでは水の種類を紹介するとともに、水に含まれる成分や味が異なる理由を説明します。
目次
6.まとめ
1.種類によって異なる水の味や働き
無色透明な水ですが、実はミネラルや水素イオンなどさまざまな成分が含まれており、その割合によって水の性質や味が変化します。
水の酸性・中性・アルカリ性とは
飲料水で重視されるポイントの1つに「pH」があります。これは水に含まれる水素イオンの多さを表したもので、pHが低ければ酸性、高ければアルカリ性に分類されます。具体的にはpH7が中性、pH1~6なら酸性、pH8~14ならアルカリ性です。酸性の水は飲むと酸っぱく、アルカリ性の水は苦味やヌルヌルとした感触があります。
例えば、お酢はpH2~3なので酸性、海水はpH7.4~8.1なので弱アルカリ性です。飲料用の水は中性が望ましいため、日本の水道水はpH5.8~8.6と規格が定められています。なお、pH9以上の強いアルカリ性の水は、胃酸の作用を弱めたり下痢を引き起こしたりするため、飲用には注意が必要です。
水の「硬度」で味は変わる! 硬水と軟水の違い
水に含まれるミネラル分(カルシウムやマグネシウム)の量を表したものが「硬度」です。硬度の高い(ミネラルの多い)水は硬水、硬度の低い水は軟水に分類されます。
WHO(世界保健機関)の基準では、下記のように分類しています。
軟水 | 60未満 | 中程度の軟水 | 60以上120未満 |
---|---|
硬水 | 120以上180未満 |
非常な硬水 | 180以上 |
ただし日本では、一般的に硬度100以下を軟水、101以上を硬水と分類しています。
水の性質は国の地形や地層によって大きく異なり、日本の水は軟水、ヨーロッパの水は硬水が中心となっています。
日本の地層はミネラルの少ない火成岩が中心であり、山の傾斜も急なため雨水は短時間で海まで流れ出ます。そのためミネラルが水に溶け出す量が少なく、軟水が多くなります。一方ヨーロッパはミネラルの多い堆積岩を主とした地層です。さらに地形の傾斜が緩やかであり、雨水は地層にゆっくり浸透してミネラルを吸収するため、硬水になるのです。
一般に、軟水はクセが少なくまろやかな口当たりで、料理にも飲用にも適しています。硬水は硬度が高くなるほど苦味などのクセが強くなり、和食には不向きです。多量のミネラルが腎臓に負担をかけ、下痢を招く場合もあるので慣れない方は飲み過ぎに注意が必要です。ただし、硬水には固い肉を柔らかくする効果があるので、洋風の煮込み料理などには最適です。
水の種類早わかり表
ここでは水の種類と特徴を簡単にまとめました。一口に水といっても、種類によってそれぞれ異なる性質を持っていることがわかります。
水の種類 | 主な特徴 |
---|---|
水道水 | ダムや井戸水などをろ過・殺菌・消毒し飲用できるようにした水。pH5.8~8.6と規格がある。 |
ミネラルウォーター | ミネラル分を含んだ水。天然水を原料としたものと、ミネラルを添加した加工品がある。 |
炭酸水 | 炭酸ガスを含んだ水。 |
アルカリイオン水 | 電気分解によって作られたアルカリ性の水。 |
RO水 | 純水の一種で、RO膜処理により不純物がろ過された水。飲用のほか、料理などにも活用される。 |
精製水 | 純水の一種で、蒸留などの方法により塩素やミネラルなどの不純物を除去した水。化粧品などにも利用される。 |
海洋深層水 | 水深200メートルより深いところにある海水。食料品や化粧品、医薬品など幅広く活用される。 |
2.地域によって異なる水道水事情
日本の水道水は、主に各地の川から引いた水やダムの水を殺菌消毒しています。そのため、地域によって水道水の質が異なります。
水道水の水はどこから来る?
水道水は水源→取水塔→浄水場→給水所→家庭の水道という経路をたどって届きます。
日本の主な水源はダムや河川水、井戸水などです。中でもダムを水源とするところは多く、日本の水源の約半分(47.3%)を占めています。(平成26年 日本水道協会調べ)。昭和50年ごろは年間取水量に対するダムの依存率は約22%でしたが、現在は約半分となり、ダムに依存する割合が増大しています。
日本の地形は山が多く急勾配なため、雨が降っても山から海へと水がすぐに流れ出てしまいます。この雨水を貯めておくために、ダムが活用されているのです。また、ダムには貯水によって水害を防ぐ役割もあります。
水道法による水質基準
日本では水道水の安全性を確保するために、水道法による水質基準が定められています。この基準は1958年に制定され、時代に合わせて改訂を重ねてきました。水質基準は以下の3段階に分かれています。
- 「水質基準」(51項目)……水道事業者などに正確に基準を守る義務・検査義務が課されているもの
- 「水質管理目標設定項目」(26項目)……今後水質管理上注意すべき項目として設定されているもの
- 「要検討項目」(47項目)……最新の知見により常に見直しを図っていくもの
水道水をおいしく飲む方法
水道水には消毒効果を保つための残留塩素(カルキ臭の要因)が入っているため、ニオイや味が気になることもあります。カルキ臭を抜いてお水の味を楽しむためには、煮沸したりレモン果汁を入れたりすると効果的です。
なお、朝一番の水や長期間家を空けたあとの水道水は、水道管に長く留まっているため塩素の効果が薄まっていたり、サビや不純物が混入していたりする可能性があります。洗濯やトイレに使う分には問題ありませんが、飲み水にする場合はバケツ一杯ほどを出してから使うようにしましょう。
煮沸する
やかんや鍋に水道水を入れ、ふたをしないまま5分から10分ほど沸騰させます。カルキが抜けて柔らかい口当たりになります。
レモンを入れる
水道水にレモン果汁を足すと、塩素が分解されてカルキ臭がなくなります。また、レモンの風味が加わることでさっぱりとして飲みやすい味になります。
3.ミネラルウォーターと天然水の違い
ミネラルウォーターと天然水の違いは、加工の程度にあります。特定の水源から採取された水を、沈殿・ろ過・加熱殺菌以外の処理を行わずにボトルに詰めたものは天然水に分類されます。ミネラルウォーターは天然水を原料にミネラル分などを加工・調整したものを指します。つまりミネラルウォーターは天然水から作られていることになります。
ミネラルウォーターの元になる原水
ミネラルウォーターの元になる水(原水)は、主に7種類に分類されます。これらの水が食品衛生法の規定に基づき殺菌などの処理が施されたものがミネラルウォーターになります。
浅井戸水 | 浅井戸からポンプ等により取水した地下水 | 深井戸水 | 深井戸からポンプ等により取水した地下水 |
---|---|
湧水 | 不圧(自由面)地下水、被圧地下水の区分によることなく、自噴している地下水 |
鉱泉水 | 自噴している地下水のうち、水温が25度未満の地下水であり、かつ、溶存鉱物質等により特徴づけられる地下水 |
温泉水 | 自噴している地下水のうち、水温が25度以上の地下水、または、温泉法第2条に規定される溶存鉱物質等により特徴づけられる地下水 |
伏流水 | 上下を不透水層にはさまれた透水層が河川と交わるとき透水層内に生じる流水 |
鉱水 | ポンプ等により取水した地下水のうち溶存鉱物質等により特徴づけられる地下水 |
ミネラルウォーターの4分類
ミネラルウォーターは農林水産省が定める「ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン」によって4種に分けられます。
ナチュラルウォーター
特定の水源から採水された地下水を原水とし、沈殿、ろ過、加熱殺菌以外の物理的・化学的処理を行わないもの
ナチュラルミネラルウォーター
ナチュラルウォーターのうち鉱化された(ミネラル成分が水に溶解している)地下水を原水としたもの
ミネラルウォーター
ナチュラルミネラルウォーターを原水とし、品質を安定させる目的等のためにミネラルの調整、ばっ気、複数の水源から採水したナチュラルミネラルウォーターの混合等が行われているもの
ボトルドウォーター(飲用水)
ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター及びミネラルウォーター以外のもの
水道水や蒸留水、純水などにミネラル分を添加したものは、「ボトルドウォーター」のミネラルウォーターとして販売することが可能です。つまり、「ミネラルウォーター」をうたっている製品全てが天然水というわけではないのです。天然水に当てはまるのは、ナチュラルウォーターとナチュラルミネラルウォーターだけです。
4.健康効果が期待されるアルカリイオン水
アルカリイオン水とは、電気分解によって作られたアルカリ性の水です。特定の方式で作られたアルカリイオン水には胃腸症状の改善効果が期待されています。
水道水をおいしく飲む方法
アルカリイオン水は、一般的にアルカリイオン整水器という機械によって作られます。アルカリイオン水ができる仕組みは、水道水を浄水した後にカルシウム剤を添加して電気分解を行うといったものです。
この仕組みを持ったアルカリイオン整水器は、1965年に内務省衛生局(現在の厚生労働省に当たる)によって薬事認可されました。2005年に薬事法が改正されたことにより、アルカリイオン整水器は「管理医療機器」と定められ、厚生労働省の認可がなければ販売できないようになっています。
管理医療機器の整水器なら胃腸症状の改善効果が認められている
世の中には多くの「アルカリイオン水」が出回っていますが、薬機法で認可された機器を用いて生成されたアルカリイオン水のみに胃腸症状の改善効果が期待されています。具体的には慢性下痢・胃酸過多・制酸・消化不良・便秘などの改善に効果があるとされています。
5.さまざまなシーンで活躍する水
ここでは、RO水、精製水、海洋深層水などの飲料水以外にもさまざまな用途で活躍する水を紹介します。
料理などで役立つRO水
RO水とは純水の一種で、RO膜処理が施された水をいいます。ROとはReverse Osmosisの略で、日本語では「逆浸透膜」と表記します。RO膜は無数の小さな穴を持ったフィルターであり、その穴の大きさは0.0001ミクロンと電子顕微鏡でも確認できないほど小さいものです。このフィルターを通して不純物などを取り除いて加工したものが「RO水」です。RO水は純水に近く浸透性が高い点が特徴で、煮物や汁物などに使うと食材の味を生かした調理が可能です。
化粧水にも活用される精製水
精製水とは純水の一種で、蒸留やイオン交換、逆浸透などの方法によってろ過し、塩素やミネラルなどの不純物を除去した水です。RO水と同様に浸透性が高く肌への刺激が少ないことから、化粧水やコンタクトレンズの保存液などにも使用されます。ドラッグストアなどで市販されていますが、雑菌が繁殖しやすいため扱いには注意が必要です。開封後は冷蔵庫で保存し、1週間を目安に使い切りましょう。
ミネラル豊富な海洋深層水
海洋深層水とは、水深200メートルより深いところにある海水を指します。海洋深層水はミネラルを豊富に含んでいることが特徴で、一般のミネラルウォーターよりマグネシウム、カリウム、ナトリウムなどを多く含んでいます。さらに太陽の光は水深200メートルより深くなるとほとんど届かないため、有機物や細菌類が少なく、比較的きれいな状態を保っています。
海洋深層水は塩分を取り除き飲料水として利用されるだけでなく、食品や化粧品、医薬品などにも活用されています。
6.まとめ
水はその成分によってさまざまな種類に分類されます。水道水や炭酸水などの身近な飲用水のほか、RO水や海洋深層水のように、飲用以外にも活用される水もあります。中でも天然水は、加熱殺菌など最低限の処理しか行う必要のない、自然の良質な水です。それぞれの性質や特徴を把握した上で効果的に活用しましょう。
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